2026年9月10月号 「 砂上の楼閣 」
森林の破壊(Sand Crisis)は誰もが周知していますが、高層ビルが乱立している世界では砂の供給が毎年約500億トン採取されています。これは人類が利用する固形資源の中で最も多く、水に次ぐ規模です。ところが、建設に使える砂は川や海底などにある粒の角ばった砂であり、砂漠の砂は粒が丸くコンクリートには適しません。そのため、高層ビルや道路、港湾、空港などの建設が増えるほど、限られた良質な砂への依存が高まります。その結果、河川や海岸の侵食が進み地下水や生態系が破壊され、洪水や高潮の被害が大きくなっています。違法採掘や「砂マフィア」と呼ばれる犯罪組織の活動が拡大する、砂の輸出を禁止する国が増え、価格が上昇するといった問題がさらに深刻化しています。悲観的な話ばかりではありません。現在、世界では次のような取り組みが進んでいます。建物を解体したコンクリートを再利用する「再生骨材」、製鉄所のスラグや砕石を砂の代替材として利用。建物を長寿命化し、新築より改修を重視する考え方や3Dプリンター建築など、材料を無駄なく使う工法は砂も、電力も、水も本質は同じです。「資源を大切に使う」という理念は、単なるコスト削減ではなく、社会課題の解決につながります。社内報でもこうした視点を発信し続けることで、社員の皆さんにも「自分たちの仕事が持続可能な社会づくりに貢献している」という誇りを持っていただけるのではないでしょうか。近年は金融商品や株式、為替など「お金がお金を生む」風潮が主流となり、工学部や数理系学部の学生達はそちらに目を向けています。一方、私たちが長年携わってきた「物造り」には、簡単には数値化出来ない価値があります。例えば、お米を作るには土作りから初め、水・気候・種苗・田植え・収穫などは長年の経験が必要です。伝統工芸も同じで、職人が長い年月をかけて身につけた技術や勘は、マニュアルだけでは再現できません。我が業界の物造りも設計図通りに加工するだけでは完成しません。材料の癖・加工条件・機械の振動や温度変化など、現場で積み重ねた経験値の積み重ねが品質を左右します。
お金は勿論大切ですが、お金だけではコメは実らず、伝統工芸も工作機械も生まれません。電力や、水・砂などの資源も使うだけでは価値に成らず、それらを生かす「人」と「技術」が不可欠です。目先の利益を追うのではなく、長い年月をかけて蓄積してきた技術・経験・現場力が重要だと思います。
砂の上に大きな楼閣を建てるのではなく、しっかりとした土台を築く。その土台こそが、農業であり、伝統を守る職人、世界に誇れる日本の製造業です。
